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逃げることは悪くない 校長に学ぶ生きるための選択肢とは

「生きるための逃げは有りです。有り有りです。」

 

この言葉は荒川弘原作のコミック、『銀の匙』で主人公が通う農業高校の校長のひとことです。

「生きるための逃げは有り」、というパワーワード、なかなか考えさせられるものがありそうです。

仕事、人間関係、自分の将来など、世の中には不安に思うことやつらいことが多くあるものです。

そして、悩みながらもそれに向き合って、逃げてはいけない、と思っている人も多いのではないでしょうか。

そんな校長の言葉などを借りながら「逃げる」という選択肢について考えてみたいと思います。

 

 

なぜ「逃げ」の選択肢が必要か

「危機に直面した生物は『戦う』か『逃げる』かのどちらかの選択を瞬時にします。では人間はどうかというと、多くの場合はこの2つのオプションを取るよりも『じっと耐える』『なんとか頑張る』という選択をします。」(山口 周『ニュータイプの時代』より)

この1文が端的に示しているとおり、人間はじっと耐える、なんとか頑張る、という選択肢をとります。

しかし、結果的にそれが必ずしも良い選択になるかは分からないものです。頑張っていたら体調を壊してしまった、本当にやりたいことを見失ってしまった、などいくらか弊害が出ることもありそうです。

「そのような選択(『じっと耐える』『なんとか頑張る』)をした生物は絶滅してしまった」(同書より)

とも言われています。

人間が『じっと耐える』『なんとか頑張る』ことによって絶滅してしまうことは考えにくいですが、「体調を壊す」、「やりたいことを見失う」、ことは本末転倒と言えるでしょう。

そう考えるとやはり「逃げる」という選択肢は必要なのではないでしょうか。その意味で「生きるための逃げは有り」と言えると思います。

 

 

「逃げ」をポジティブに考える

私たちは幼少期から逃げることはよくない、他人に迷惑をかけることはよくない、と教え込まれているわけですが、ここで一度「逃げ」をポジティブに考えてみましょう。

まずは冒頭であげた『銀の匙』の校長の言葉を引用します。

「逃げて来た事に負い目はあっても、その逃げた先で起こった事、そこで出会った人… それらはどうでしたか? 否定するものでしたか?」

逃げた先でどんなことがあったのか、今ここで逃げたとしたらこの先どんなことが待っているのか。「逃げ」は悪い選択肢ではなく、新しい出会いのための選択肢、と考えることができます。

また、「逃げる」ではなく「新しい環境に入る」と考えてみてはどうでしょうか。

今までしていたことをやめ、新しいことをはじめる、そう思考を切り替えてみるともう少しポジティブに考えられそうです。

「逃げる」はその行為そのものであると同時に、挑戦から生まれる副産物、とでもしたら言い過ぎでしょうか。

でも、それくらい「逃げ」はポジティブに考えてもいいものだと思っています。

 

 

「逃げること」の責任

今私はop.Cという団体に所属してpupaを運営しています。例えば私がそんなop.Cから逃げたとします。

そうすると当然私が今まで受け持っていたいくつかの仕事はほかのメンバーが担うことになります。

これは会社やサークルをはじめどんな団体であっても同じことです。当然メンバーには迷惑をかけているので、これは責任問題ではあります。

ですが、「逃げること」の責任は相手に負担がかかることではない、と私は考えています。

それ以上に考えるべきは逃げた後、逃げた先で自分がどうやって行くか、ではないでしょうか。

逃げた後、その選択が正しかった、と言えるような行動をとれるか、これが逃げることに伴う一番大きな責任なのではないかと思います「スーパーマンは誰にも見られない場所で変身する」(※)ように、「かっこいい人」は人知れず努力しています。

「逃げ」を「逃げ」で終わらせずに、その後自分が納得できるような行動をとれるか、その決意をもって「逃げる」という選択をしてほしいです。

 ※千田 琢也 『孤独になれば、道は拓ける』より

 

良くない「逃げ」とは

ここまで話すと逃げることを推奨してきているようにも思えますが、逃げてほしくない、と考えているものもあります。

それが自分が成長できるチャンスです。

成長には少なからず困難があります。きっとその中で逃げたくなる場面もあると思います。ですが、そんなときには逃げることなくやりきってほしいものです。

では、自分が成長できるかどうか、はどのように決断するべきなのでしょうか。私は自分で決断するべきだと考えます。

あるプロジェクトを進めていて、それが負担で負担で仕方なかったとしましょう。そして上の人からは「きっと君自身の成長にもつながるから」と言います。自分が本当に自分自身の成長につながる、と思えるのであれば逃げるべきではありません。

でも、他の人から何を言われても、自分の成長にはつながらないだろう、と考えるのであれば逃げても良いと考えます。

こうやって考えて私がやめてきた団体は数知れず……でもそのたびに新しい経験に触れることができました。

 

 

「逃げ道のない経済動物と君たちは違うんです」

私たちには逃げる権利、そして逃げた先でもっと楽しく暮らす権利があります。

「逃げる」という言葉を聞くとどうしてもネガティブに考えがちですが、自分のために「逃げ」という選択肢を持っていてもいい、と考えてほしいです。

op.Cの“op”はoptionから取っています。自分の選択で決まっていくのが人生です。

長い人生の中で自分のために「逃げる」という選択肢を持つことも必要なのではないでしょうか。

 

引用、参考にした本

荒川 弘『銀の匙』 

山口 周『ニュータイプの時代』 

千田 琢也『孤独になれば、道は拓ける』

自分の選択を考えたい方におすすめ!